SING LIKE TALKINGの活動と並行して、95年のカヴァー・アルバム『CORNERSTONES』からソロ活動を開始した佐藤竹善が、初のバラード・ベスト・アルバムをリリース。『静夜 〜オムニバス・ラブソングス〜』というタイトルが示すとおり、ふたりで過ごす静かな夜にピッタリな大人のラブソング集だ。
『CORNERSTONES』シリーズで、名曲のカヴァーをライフワークとしている彼ならではの選曲で、新旧の名バラードのカヴァーも多数収録。リリースに先駆け、アルバムの大きな魅力の1つである“カヴァー”について、たっぷりお話を伺いました。
──『静夜 〜オムニバス・ラブソングス〜』には多数のカヴァー曲も収録されていますが、竹善さんにとってカヴァーとは?
今から12年前にソロ活動をスタートしたんですけど、当時、SING LIKE TALKINGとしては、アルバムがチャート1位になったり、充実している時期でした。でも、僕自身は、もっと音楽的に高みに行きたいという思いに満ちていたんですね。
僕らは、宅録の第一世代で、SING LIKE TALKINGは、アマチュア時代にライヴの経験がほとんどなくて。だから、まず、そういうスキルを身につけたいと思ったんですね。それで、ライヴハウス・セッションを始めたんです。そこで、色んなミュージシャンと知り合って、色んな勉強ができたり、発見があったりしたんだけど、その中で、元々ある名曲を自分のスタイルで表現していくこと、名曲を次の世代に伝えていくこともすごく大切なことだなぁと、より強く実感するようになりました。そこでオリジナル曲を作るということとは別に、カヴァーをライフワークにしていこうと思ったんですね。
──新旧さまざまな楽曲をカヴァーされていますが、竹善さんがカヴァー曲を選ぶときは、どんな風に?
まず一番は、大好きな曲ということですね。僕自身が大好きな曲。次に、実際に歌ってみて、僕の声で表現できるかどうか。
古い曲も最近の曲も、僕の中では区別はないんですよ。いまでも、そのメロディが斬新と感じられるか、そして、先々まで美しいって感じられるだろうか、それだけですね。その曲にまつわる思い出とかはあまり意識しないですね。
世の中には名曲はいっぱいあるので、掘り起こしていきたいという気持ちも強いですね。『CORNERSTONES』(最初のカヴァー・アルバム)の時から「Whatcha' Gonna Do For Me?」のような有名な曲から、PAGESの曲のような通好みのものまで幅広くカヴァーしてきましたが、今回のアルバムで言うと「遠野物語」は、それに当たると思います。
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「遠野物語」は、あんべ光俊率いるフォーク・グループ“飛行船”が76年にリリースしたナンバー。飛行船解散後の78年、あんべ光俊もソロでリリースした。柳田國男の民話集“遠野物語”で知られる“遠野”の町での出会いと別れを描いた、切なくほろ苦い青春フォークだ。
──今回のアルバムで最も意表をつかれたのが「遠野物語」です。よくぞ、掘り起こしてくださいました!
これはね、評判です。ほんと、よくこの曲を選びましたねって(笑)。選曲を褒めてもらうのは、すごくうれしいんですよ。
──どんなキッカケだったのですか?
今から32年前の曲なんですよ。僕もリアルタイムで聴いたことはあったと思うんだけど、当時はそれほど意識してなくて。去年、偶然に、YouTubeで見つけたんですよ。YouTubeって関連映像が表示されるでしょう。何かの映像を見ていて、次々と関連映像を見ていくうちに「遠野物語」が出てきて。再生してみたら、あんべ光俊さんの去年の岩手県民会館でのコンサート映像だったんですね。それがもう素晴らしいテイクで。50代のあんべさんの表現が、すっごく入ってきたんだと思います。で、この空気感でやりたいと思って。
──あんべさんご自身もコーラスで参加されていますが…。
ダメ元でお願いしてみたら快諾してくださって。あんべさんの歌い方がね、これがまたすごく独特なんですよ、コブシをクッククッと回して。あの歌い方は今でもとても新鮮に感じます。
YouTubeの関連映像で、フォークの名曲をたくさん視聴しましたけど、ほとんどは、その当時の原曲のままが一番イイという印象。でも、「遠野物語」は、曲の作りから違いますからね。普通、サビでああいう風にいかないものね。フォークっぽいメロディなんだけど、実はかなり新しい洋楽的な要素もあって・・・。
──サウンドは、アンデスっぽいですよね?
そうなんですよ。以前に「万里の河」(チャゲ&飛鳥)をカヴァーした時も感じたんだけど、ケルト・ミュージックの雰囲気があって…。
──確かに「万里の河」と「遠野物語」には共通する雰囲気がありますね。
そうでしょう。アイリッシュ感とかケルト感とかあって・・・。僕、CHAGE&ASKAさんの曲の中では「万里の河」が大っ好きなんですよ。それから、今回のアルバムにも収録されている「はじまりはいつも雨」。これはASKAさんのソロですけど、この曲も大好きで。これから、どんどん時代が変わっても、その時代、その時代の音になっていく曲だと思いますね。
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