前作『ケツノポリス5』(2007年8月)から僅か10ヶ月。ケツメイシが、早くもニュー・アルバム『ケツノポリス6』をリリース!
これまでにない短いインターバルでのアルバム・リリースとなったが、実は、この『ケツノポリス6』の原型は、『ケツノポリス5』制作時に出来上がっていたのだと言う。
話は、前作『ケツノポリス5』に向けての“曲作り合宿”に遡る。トラックメイカー陣(DJ KOHNOに加え、YANAGIMAN、NAOKI-Tも参加)の各部屋を、RYOJI、RYO、大蔵が一定期間のローテーションで移動。その都度、組み合わせの異なる“2人1組”のチームで曲作りに臨んだ。この制作スタイルが、メンバー相互のライバル心を大いに刺激したようで、この合宿から、実に60曲にも及ぶデモが生まれた。その中から、取捨選択していったものの、名曲揃いで、とても1作のアルバムには収録しきれないボリュームに。ならば、2作のアルバムを作ってしまおうという結論に至ったのだと言う。『5』リリース以前から、『6』の原型は既に誕生していたのだ。
とは言え、『5』に入りきらなかった曲ばかりではなく、初めてのウィンターソング「冬物語」や、初の映画主題歌となった「出会いのかけら」をはじめ、「空」「儚し」「街並」「心の声」は合宿以降に制作されたナンバーだ。
これまで以上に、メンバー個々の特色もハッキリ。畳み掛けるようなラップで魅了するRYO。陽気なパーティー・チューンは大蔵にお任せ。RYOJIの伸びやかなヴォーカルには、真摯なメッセージやバラードがピッタリだ。
サウンド面も、初のカントリー&ウエスタンがあったり、ラテン・ロックがあったり、ラップのみの曲があったりと、実にバラエティーに富んでいる。
そして、何よりも、ケツメイシならではの“言葉”が感動を呼ぶ。全編を連ねているのは“励み”だ。
サンバのリズムの「カーニバル」は、どんな憂鬱な気分も瞬時に吹っ飛ばしてくれるし、「マジでライブする5 秒前」「We love music」「何故歌う」「心の声」といった曲からは、ケツメイシ自身の音楽に対する真摯な姿勢が伝わり、聴く側も、自分のできることをしっかりやろう…そんな気持ちが沸いてくる。
映画“陰日向に咲く”主題歌となった「出会いのかけら」は、決してヒーローではない、ひっそりと生きる人々を描いたナンバーだが、こんな風に美しく優しくありたいと思わせる主人公がそこにいる。「流れ」や「空」なども、こんな風に清潔に生きたいと思わせるストーリーがそこにある。
「儚し」「想い」「冬物語」と続く切ない失恋ソングでさえ、“励み”に転じる。ひとは、自身の悲しみを歌に重ねて、泣く。恋を失った痛みから逃げようとすると、その感情は、相手への怒りや恨みに転化してしまう。だから、泣けばいい。思いっきり泣いて、泣き明かせば、苦しみも少しずつ浄化していく。
「オレの道オマエの道」とそれに続く「街並」は、別々の道を歩んでいくことを選んだ者同士の歌だ。友達や恋人、夫婦、そして親子でさえも、どうしても別れを選ばなければならない時もある。バンド仲間、チーム・メイト、職場の同僚…聴く者によって、様々な別れが思い出されるだろう。そして、思い出と共に、その時の痛みと決意が蘇ってくるはずだ。
オーケストラを率いての「伝承」は、母への感謝を、わが子への愛に転じていく荘厳なナンバー。母への想いを綴った最初の4行だけで、泣けてくる。そして、ラストは、メンバー全員が子供を持ったことを契機に、DJ KOHNOの発案で作られた「子供たちの未来へ」。希望ある未来のために、いま、自分たち大人が何をすべきかを問う軽快なナンバーだ。
子が親を、親が子を想う。こうした当たり前の家族単位の愛が、1つずつ重なって、社会全体の大きな愛へと広がっていく。
『ケツノポリス6』は、日本の未来さえも、心強くしてくれるアルバムだ。